星の広場で歌ってきました!



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 12月9日、吉祥寺Star Pine’s Cafeにて行われた[篠田昌已生誕50年 "FIESTA de COMPOSTELA" 「コンポステラ〜星の広場で」] 、私も参加させていただき、一曲存分に歌わせていただきました。
 この日の出演者は、工藤冬里、駒沢裕城、杉林恭雄松永孝義ストラーダ原マスミ+近藤達郎、向井千恵、ジンタラムータ・オーケストラ+桜井李早。


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 午後から冷たい雨模様となった9日であった。私は傘をさして吉祥寺に向かう。もう一本、折りたたみの傘をバッグの中に忍ばせて。
 16時、ここ数日関西方面にツアー中だったチェリーと吉祥寺の現場で再開する。
 ざっとサウンド・チェックを済ませ、その後、雨の吉祥寺を少し歩く。18時頃、雨はやや強く降っている吉祥寺の街であったが、ふたり、一本の傘にて、大通りを渡り、サンロードにもぐり込む。
 19時半の開演まで時間があるので、うなぎ屋に入る。鰻の串焼きコース、肉豆腐などを注文し、ビールでしばし喉を潤す。
 私は後ほど歌うので、会場に入ったら出番までビールは飲まない(ビールは炭酸なので)、だからして、今、ヤッておこうとキメていたのである。それに、寒さのせいか、とてもお腹が空いてきて・・・しかし、それも後ほど歌うのであまり満腹にすることはよろしくない。
 鰻の串はタイミングよく頭の方から順にテーブルに届けられ、山椒をササッとかけていただく舌触りはフワッと軽やかであるが、そこはやはり鰻、よい塩梅である。チェリーのツアー中の話や彼の留守中にやってきた新しい冷蔵庫の話など、テーブル席にもかかわらず、向かい合わず、並んで腰を降ろし、ベンチシート気分の私であった。
 その後、躯も暖かくなり、さあ、再び会場へ。


 19時30分・・・フロアはたくさんのお客さんである。故・篠田昌已氏への想いのある方々が大勢集まられている。生前の氏にご縁のあった出演ミュージシャンも、素晴らしい方々ばかり。バーの前にて、知恵さんと会う。彼女のお顔を見ると、いつも勇気づけられるRisaである。知恵さんとは、そういう力を持っていらっしゃるお人である。

 そう、私は今宵、寄り添わせていただきながらも、おっとり構えてなどいられないのである・・・出番は最後に近い・・・つまり、待ち時間が長いのであり、その間、好きなお酒も我慢である。どうやら、ガッチリと歌いたいらしい。
 しかも、この日に私が歌う曲の歌詞は私の筆によるものではないのである、よって、その歌詞がすっ飛ぶことだけは恐れた・・・正直。
 私が歌うのは、今秋、野戦の月のお芝居『ヤポニアオペレッタ』のテーマとなった楽曲である。歌詞はこの劇団の主催者である桜井大造氏によって書かれたもの。歌うのは私という個人であるが、この詩を書いた人の心を想うのである。そういう意味では、忠実に言葉を伝える必要がある・・・歌詞とは、大切なのである・・・それをその場で聴く人は、そこに物語を感じ、その言葉を信じて聴くのですから・・・私はそれを、音楽大学時代にレッスンの先生により仕込まれた・・・。
 更には、歌うこととは、大きな表現であることが望ましいだろうと、私は感じる者なのである。

 出演なさる方々のステージを時々拝見させていただきながらも、フロアは熱気で私の躯には少々暑すぎるため、涼しい楽屋裏にいた・・・独り、本番を待つって、いいな・・・と、微笑しながら。

 で、22時半をまわった頃、大熊亘氏に紹介していただき、ステージに参上することになったRisaは・・・嗚呼、素直に・・・快感・・・・・・。

 何故なら、暗くはあっても加減によってこちらから見える客席の皆さんたちの表情が、凄くすごく、ステキであったからなのである!
 それは、19時30分(後)にスタートし、この22時半過ぎまで、この晩のステージを鑑賞していらした皆さんの豊かな心の現れなのだわ・・・そして勿論、ここまでのステージに立たれた素晴らしいミュージシャンの方々の魅力がもたらした、平和なのだわ・・・。
 ステージの私の背後からは、トランペットの北氏の華麗で美しい音がグイグイと迫る・・・流石、”シブサ”の人だわ・・・と、背中で受けとめる。美と力のベクトルは、隅々に狙いを定めるべし・・・なんて考えながらも、躯も動く。

 篠田さんのエネルギーを改めて思い知った。
 私を今宵、ここに立たせてくれて、ありがとうございます。
 私がいなくても、この晩のステージは、素晴らしい場所となることは明らかであるにもかかわらず、あなたは、何故か・・・もしや・・・私をここに呼んでくださるように・・・私を取り巻く世界に仕向けてくださったのでは、ありませんか?

 ジンタラムータの皆さんの中に、私はひとつ、場をいただいた。
 そうして、私は歌う時、客席の皆さんのお顔を出来るだけ見つめながら歌うことが好きらしい・・・視線を交わしたくなるらしい・・・こちらが一方的に歌っているなんて、それでは、詰まらないわ・・・皆さんのお顔を、私も、見たいの・・・ええ、そうすることで、私は、奉仕したくなる・・・今、歌を歌っている私は、私の心というもの、伝えさせていただいているのですもの・・・。

 thank you......


 ステージを下がり、奥にて一服していれば、ふらっとそこに現れる駒沢裕城氏のお姿・・・。
 駒沢さん、私に「いい世界をつくっていたね」と、微笑んでおっしゃってくださった。
 ホッとした私。

 その駒沢さんの演奏は・・・羽根の生えたペダル・スティールである。
 まさに、この雨模様の東京の空の上の、今や輝く星となられた篠田さんと、美しい交信をなさっている演奏であった。
「いい世界」・・・そのようなお言葉を駒沢さんからいただけた私は幸いであるが、それこそ、「いい世界」というものを、どこにでも持ち歩き、奏でてしまう駒沢さんは、ファンタスティックそのもの・・・それ以外の何ものでも、ないわ・・・音楽家であるが、それ以前に、ファンタスティックな人間であられる・・・そうよ、氏は、人間が「人で在る」という喜びをよくよく、ご存知なの・・・ですから、氏は、あのような音楽を創り出す人・・・どこで、どんな事情で、どんなことが待ち受けていたとしても、駒沢さんという音楽家は、彼でしかない音をその場で紡ぎ、空間にまき散らし、果ては空に、天に、音の羽衣をお返しする芸術家である。
 打ち上げの頃、またまた、氏とシャンパンを飲みながら、ちょっとだけ<深い>お話を一緒にさせていただけて嬉しいRisaである・・・。

 また、一服の後、それゆけMrs. Beerちゃま!と言わんばかりにバーの前へ馳せ参じた私は、今宵もご出演なさっていた(我が)ロンサム・ストリングスのベーシストさんでもあられる松永さんから暖かい拍手をいただいた。
 兄貴(Risaの大学の先輩でもあられるのです松永さんは)にニッコリされて、嬉しがらなくて、どうする?

 そして、本当に久しぶりのストラーダの演奏・・・これは、良かった!
 活発にライヴ活動をしていた10年ほど前のことは懐かしいが、こうして今現在、時に4人で音を出し合う姿は、更によい。人は、懐かしむことこそあっても、過去にばかり生きるものでは、ない。今、<在る>ことが、どれほど価値のあることか・・・それを、知ったうえでの過去でなければ、只の懐古趣味である。
 そういう見地から、このストラーダは、時の流れなど感じさせない。ひどく久しぶりの4人での演奏は、時代の流れを取っ払う現役性に満ち溢れている。センチメンタルな思い出など、産まれてこのかた知りもしない・・・と言わんばかりのクールな現場主義=インプロ感際立つ演奏スタイルはハプニングである。・・・ねえ、当然のごとく、生の、今日の、それぞれの表現を潔く出し合うことで、ここに過ぎていく時間を楽しむのが、俺たち・・・なの、でしょう? 
 この生き(粋)の好さに、私は、感動した。



 終演後、私の歌を喜んでくださった方々からお声がけしていただき、心から救われたRisaである。


 一言、言っても、いいかしら?

「私はこの晩、最高に、自由だった」


 12月8日から9日にかけて・・・これは、言わずと知れた、ジョン・レノンの命日でもある。
 私はあの1980年の暮れ以来、毎年、祈る気持ちを忘れずに過ごしてきた。
 そう、これまでは、祈る気持ちだけだったかもしれない。
 
 が、今年は違った。
 その日に祈るだけでなく、私自身が、或る場所に立つことが出来た。真に、有り難いことである。



 帰宅して、ふと、思う。

 ・・・こんなに褒められたのだから、しばらくは、褒められなくてもいいだろう・・・。



 残すところ3週間となった今年2008年・・・。

 後は、来年発表予定の私の著作物=『YES』のための世界に遊ぼう。


 最後に、8日、9日と、この2日間に渡るイベントのために尽くされたスタッフの皆さん、そして文字通り「盆暮れが一緒にやってきた」ような暮れの日々を麗しく、かつ、幸福にお過ごしになられている大熊夫妻に、深く感謝いたします。

 また、この12月9日の夜、危篤状態にあられたひとりの方のベッドにこの演奏の生の映像が電波に乗って届けられたという。
 私はお会いしたことはないのだが、この”星の広場”が、遠くにいらっしゃるその方のもとへ、活きたまま送る事が可能でありえる21世紀とは、素敵な時代なのだとも感じられる。

 世界は、よりよくなっていると信じたい、生き続ける人の心は、確実によくなっている、これからも、よりよくなる為に、更に、問う必要もあり、そのように在ることを忘れてはいけないだろう。



 PEACE & LOVE