エゴイストと魔女

 そういえば、昨日5月6日の黄金週最終日のお昼過ぎあたりまで、我が家の界隈はまるで眠りの森であるように静まりかえっていた。雨は音も無く煙り、家々からの生活の音は地下に潜ったように聴こえない。
 我が家だけがこの土地に取り残されているようで、奇妙に過ぎていった午前だった。
 その静まり返った世界を現実に戻したのは、隣家のご主人の咳払いだった。外壁越しに聴こえて来たこのいつもの咳払いに、ややほっとする。
 すると、向かいの家の車がエンジンをかける音がし、斜向いの家の少年たちの声も聴こえた。
 人間の生活が、連鎖反応されていく。誰かが動かなければ、誰も動かない。しかし、誰かが咳ひとつしただけで、次々と行動の音が聴こえ出す。恐らく、休暇最後の日の雨は、人々を気怠くさせ、営みを遅れさせ、ちょっとした深い森に引きずり込んでみせたのだろう。
 雨というものは、時々、悪戯に人の世界を迷わせる。当たり前の雨と思ってはみても、それは自然の成すこと、人間にわざわざ媚びる必要の無いもの、謀も、ない。

 そんな調子だったおかげで、ドラマの舞台がほのかに浮かぶ。
 登場するのはエゴイスト。
 迎え撃つのは魔女。
 女は生まれついた時から魔女なのだから、凡そ、非人情の世界に居てふさわしい。
 男は願うならエゴイストであると、仮定しよう。
 すれ違うだけでもいい、ひとまず。
 からかわれるのは、どちらか。
 
 甘いな。
 甘いが、あっという間に触れることが大事であろう。

 全く異なった視点の味わいを求めて、G・メレディスの小説あたり、読みたいものね。
 ヴィクトリア朝の文学というのは、光と影を感じさせてくれて、その中でも、W・ペイターはじっくりとした筆感で日当りの悪い部屋から差し込む光を絵にしてみせる。ラファエル前派と通じる肉厚な印象。
 だが、それほど肉厚、もしくは、肉筆でない限りに済ます案配・・・万華鏡で覗いた森の中であり、やはり、蒼い血。

 随分と大袈裟なこと、言ってるわね。
 だけど、これくらい大袈裟にしないと、遣ってられないの、駄目なのでしょう、私は。
 枝でも拾っている妖精だと思ってください。

 
 Robin、あなたを、ゾッとさせたいわ。
 どんな手が、いいかしら?
 

 in the rainy forest
 he who puts on a black hat seemed to be a person from another world
 there was a graveyard behind him...


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 『YES』桜井李早:著/MARU書房

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 お値段は1500円+送料手数料200円です。
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 御注文くださった方のプライバシーは、当然、厳守させていただきます。


 そして、『YES』出版記念パーティー&ライヴ / "Going a-Maying"のお知らせです。
 5月23日(土曜日)
 出演ミュージシャンは、青山陽一sakana、桜井李早+桜井芳樹...(飛び入りゲストさんがありそうです!)
 open / 18:00
 start / 19:00
 前売 / \2000 (ご予約は月曜日を除き、18:00以降、直接、お店の方に電話でお問い合わせください)
 当日 / \2500
 場所 / MARU(東村山市野口町1-11-3 tel 042-395-4430)


 ..* Risa *¨