"地球に落ちて来た女"の30日 & R.E.M.の思い出
10月30日、金曜日。
19時半過ぎ、オニキユウジさんが歌い始めた瞬間、マンダラ2はアメリカになった。
それは彼が歌うほとんどの歌詞が英語だから、というような単純な理由ではない。
確かに、彼がこれまでの人生のほとんどをアメリカで育ち、過ごして来た環境がそうさせているには違いないが、私は数年前、初めてオニキユウジさんの作品を聴かせていただいた時から、彼の音楽に(いや、音楽だけではない)、何か、深く、太い感性を感じていて、それがこの晩、以前よりも増してステキに聴こえた。
オニキさんのソロの後、ロンサムストリングスが登場するが、今宵の彼らはオニキさんのゲスト。
お馴染みの曲を一気に演奏してみせるが、奇妙なアクシデントもあり。
これは"Halloween-motion"かしら・・・と、なかなか興味深い。
"Jack-o'-Lantern"の悪戯・・・SMiLE・・・
その後の二部、オニキさんとロンサムの共演は、うっとりした。
まず、オニキさんの歌がいい・・・心から、心から、ありがとう、と、言わせていただきたいくらい、よかった・・・彼の声に込められている人間性がうかがえるのよ。
自然であり、気負わず、彼が詩に込める光景は物語性もあるが、特にご自身と限らず、誰かの日常にひっかかるような日だまりと木陰のような感情の現れが滲んでいるような気がした。
繊細で、聡明な方だ。
表現者は、気配りがないといけない。
その細かな心遣いが、作品を鮮明にし、深くし、美しくする。
しかし、それだけではないわ・・・。
素養・・・
時間をかけて育てあげてきたものを大切に抱き、それを注意深く観察しながら表すのね。
それは手っ取り早く習得できるような・・・つまり、インスタントなものではなく、道に迷いながらも、進む大きな森・・・いいえ、旅よ! ・・・旅を愛する心。
私はオニキさんとロンサムの夜に、うまく'tangle'した。
玄一さんのスティールに押し倒され、原さんのバンジョーに歓喜した。
薄笑いのチェリー、そして、松永さんのチャーミングな予想外。
終演後、お店の閉店までチェリーとオニキさんとお話していたのだが、ふと、チェリーがオニキさんの音楽にあのR.E.M.を感じる、と、漏らしたら、オニキさんが、昔、アメリカでリアルに感じた"R.E.M."体験の思い出を語ってくれた。
そのお話する様子がまた素敵だった。
そう、私もR.E.M.は大好きだった。
・・・時は1984年から'85年になる頃、大学時代、時代はニューウェーヴだったが、突然現れたR.E.M.にグッと来た!
・・・ああ、こういうバンドが欲しかった・・・。
来日公演も、チェリーと観に行った・・・私はダッフル・コートを着て、チェリーはP・コートを着て・・・私たちは若かった・・・そして、マイケル・スタイプは魅力的だった。
今日でも、マイケル・スタイプは慈善活動などもしながら、相変わらず愛されているようだが、あの若い頃の彼のクールな歌いっぷりは、胸を打った。
そんな私たちの当時の日本でのR.E.M.体験だが、オニキさんはアメリカで実体験をされていたの。
彼が語ってくれたことによると、R.E.M.のようなバンドが'80年代半ば頃、幾つかアメリカにもあったのだとか・・・しかし、彼らのように急激に上昇し、かつ、生き残ったバンドはなかった・・・という。
私がオニキさんに「R.E.M.のファーストが好きだ」と言ったら、彼は尋ねた。
「日本でのファーストは、"MURMUR"になりますか?」
私がたぶんそうだと言うと、彼が、アメリカでは、あのアルバム以前に、彼らが5曲程度の作品を録音したレコードが発表されていたということを語ってくれた。
日付が10月30日から31日に変わる頃。
私たちはお店を後にした。
30日の夕刻、吉祥寺駅に降りた私は、猛烈に喉が渇いていて、ライヴ前、お蕎麦屋にて飲んだビールはまさに黄金の潤いだった。
そう、私は近頃、"地球に落ちて来た女"のごとく。
渇きと、そして、細い躯に、悩まされている。
が、このような渇きを伴う状態こそ、私を"生"の憧れへと、導いてくれるのだろう。
trick or treat...
enjoy your magical night
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