in Montoison 2013...*



 ここMontoisonでは様々な自然とローマ時代の歴史を伴う光景が見られる。
 7月末、すこぶる夏らしい日差しなのだが、トウモロコシ畑を通り過ぎ、奇麗に刈り込まれた麦畑の風景に入る頃には強い風に帽子も飛ばされそうになる。太陽こそ暑いが、時に、風は冷気を含む。
 Colinと私はよくこの景色の中を歩く。このように外を歩いている時、私たちの口数はあまり多くはない。微睡むように歩いていても、目の中に飛び込んでくる微笑ましい光景によってしばしば目覚めさせられるからだ。


 必ずと言っていいほど出会うのは、広い民家の庭から元気よく吠えながらやってくる犬…挨拶にしては喧しすぎるが、細いトウモロコシのようなシッポは愛らしい。
 秘密めいたイチジクの樹…それは今年の夏、なかなか熟さなかったが、ちょっと見ない間にあっという間に熟れてしまった。
 そしてこの日、父親に守られながら誇らし気にトラクターを運転していた小さな男の子。この父息子の様子を眺めた時、Colinは言った。
「ごらんよ、あの少年は今、とても勇敢な気分なんだ。彼の表情は物語っているよ…"僕は運転できるよ!"…と。英雄になった気持ちなんだね。男の子には幼い頃、ああいう経験が必要なんだ。やった! やった! っていう喜びがね…」
 その親子とすれ違った後、その道沿いに佇む"Huilerie Richard(1885年創業)"に寄り、言葉にできないくらい美味しいオリーヴを買った。


 ご存知の方も多いかと思うが、ミストラル(mistral)呼ばれる南のフランス独特の季節風は、アルプスを降り、ローヌ河沿いを暴れ、地中海に及ぶ。
 この風のような自然が齎す勢は、人間に慣れた都会の自然と異なり、人間にいつも畏れを抱かせる。
 そのような畏れの中の一部に、人間というもが共存しているという当然のことを私たちはいつも気づかされる。


 あの農機を運転していた坊やは、このMontoisonという土地に育ったことをいつまでも忘れないだろう。
 彼が将来、どこか別の場所に生きることがあったとしても。









 pic: by Colyn M Pearson
 Haiku/俳句: by Colin M Pearson






 Risa :*)