"The Bright Liquid"



サッポーのように、私は私の痩せ細った胸を見まいと、鏡から遠ざかる。
"hello honey it's me"と、音楽が言った。
私は苺酒を飲みながら、舌を凍らせ、
それは発砲が辛いのだろう。
私は自身が泡になる方が易いと睨んだ。
薮睨みは、いけない。
塩がほしいだけだ。
そこでやはり、サッポーのように今宵も月夜の崖から、
華麗に海へとダイヴする。
私の胸は貝殻の胸である。
コルセットと化すその貝殻は、海の泡となろうとしている私に、
あたかも処女に諭すように語り始めた。
こんな話がありました。
或る国王は常に英雄の姿を映す鏡を持っていました。
しかし、それは彼にしか見えない英雄の姿。
その鏡を従者に渡した王でしたが、
従者が見たものは、英雄の姿ではなく、騾馬の姿でした。
私は応える。
それはまるで、噛み合わせが悪い歯に似ています。
すると貝殻は戒めを私から緩めるように、言った。
あなたの目は口ではありません。
あなたがそう思っているそのあなたの胸は、
噛み合わせの悪い歯ではありません。
それらはあなたが泡にならないようにと、
あなたを守る甲冑だと思ってごらんなさい。
私は尋ねた。
では、せめて、もう少し、潜っていてもいいですか?
貝殻は言った。
一刻、一刻を大切にできるのであれば。
私は言った。
私は海の底でも目を開いていようと思います、夜光虫のように。




Risa Sakurai / 桜井李早 ©







pic: "The Bright Liquid" ~by Edmund Dulac