薔薇の物語 - 或る過去のノート -
無意識に入り込んできて、それがもたらすのは、歓び、驚愕、嘆き、情熱、苦悩、疲労、微笑み…。
何処から入り込んでくるのやら…根、それとも、光合成する葉、花弁の先端…。
光のように暖かく、雨のように冷たく、風のように動き回る。
私は、最初に咲く花ではないが、歌うように空を仰ぎ、祈る。
祈りつづけた…祈りつづける。
つまらないモラルなど、抜きにして、祈ろうとしてきた。
祈りは、目を閉じて行うものだから、そこに想像するものは、誰にも観ることができない私だけの形。
この瞬間だけは、誰にも邪魔をされることも無く、誰もこれを奪うことはできないわ。
夜は思考させ、朝には見極めを。
笑ってはいけない。
植物にだって、意志があり、鋭い感覚があるわ。
ただ彼女は動けないだけ。
彼女を導くものがあれば、すぐにでも、立派に立ち振る舞う覚悟があるわ。
この上なくおしゃべりな人たちでも、そのそばに近づくと、たちまち夢みるような運河。
楽しい時も悲しみの日も、この運河に沿っていれば、私はいつも、幸せ。
幾つものゲートを越えたところに、彼女の最も自由で黙しがちな祈りが咲いている。
薔薇の物語。
あっ!
今、月が、のぼったわ!
Risa Sakurai / 桜井李早 ©
p.s.
…これはいつ、綴ったのだか、忘れた…少し、古い、それは私がまだ、祈りという委ねの言葉の魅力に取り憑かれていた頃なのだろう。
pic: from a part of "The Heart of the Rose" ~by Sir Edward Coley Burne-Jones (1833~1898)