クミン風味のレンズ豆のスープ



 




 おかしなもので、私は時々、自分以外の人間のための人生を生きているような気がする事があるのだが、反面、今のように病気の時こそ、自分自身を生きていると実感する事がある。
 要するに、それは一種の孤独感であり、例えば今日のように執事のガジョンがいない場合など、私は当然、食事の用意もする。冷蔵庫や棚の中にある食材たちで、今の自分に見合うものを考えるのだが、今日はまた、レンズ豆のスープを作った。
 そこで少し困ったのは、玉葱がやや足りないのである。執事のガジョンは今日は休暇で留守なのだから、買い物は頼めない。私は玉葱のために買い物に行く気力はない。だが葱はある。その葱は白い部分が案外太い。ご存知のように、西洋葱(ポロ葱/ポワロ)は日本の下仁田葱のように太く、刻んでスープやキッシュなどに使われるわけで、その要領で玉葱不足をこの日本の葱で補うことにする。
 今日はクミンを効かせ、ガーリック、擦りおろした人参、トマトと共にコトコト煮込んで、出来上がり。
 実に、私は今、右側の首に腫れがあり、食べ物を飲み込むにも首と喉に痛みがある。食欲はあるが、できれば痛みに障らない食事がありがたいのである。


 レンズ豆は外国ではとても安く手に入るが日本では少し値段が高いかな。しかし、食物繊維は勿論、ビタミンB群やタンパク質、鉄分も豊富であるし、免疫力を高めるレシチン、そして赤血球のために役立つ葉酸が含まれている。


 このスープ、西洋の味がいたします。お好みで、レモン汁など、少々垂らしてみると、爽やかな酸味も楽しめます。


 さて、このスープをいただいたら、再びベッドに戻り、首を冷やしながら、秋の虫の音を聞きながら、読書をしよう。
 それらは枕元に並んでいる数々の懐かしい本やら、何度も何度も繰り返し読んだ本やら、そのような愛おしいものたちを手当たり次第に。

 


 Risa Sakurai / 桜井李早