イタリア文化会館にて








 23日は福岡史朗さんのお招きで"Italian Surf Academy"の演奏を聴きに九段下のイタリア文化会館へ。面白かった。このバンドはイタリア人ミュージシャンたちのトリオで、ギタリストのマルコ・カッペリは日本でもお馴染みのNYで活動するマーク・リボーの友人。ドラム、ベース & ギターの演奏表現は確かにヨーロッパ的な印象だ。しかしドラマーの泳ぐような道筋がどうやらあって、ベーシストは個人主義かつ積極的。バンドとしての魅力はギタリストのアヴァンギャルドな音楽性で全体のイメージが作り出されているような見方はありがちだろうが、ははぁ、このトリオにおける<主>はあのナマズのような電波を発しているドラマーだな、と数曲聴いた頃、確信した。して、ドラマーとべーシストの性格は正反対(それは仲が悪いという事ではなく、普通に異なる人間として、という意味である)だろう、そこにギタリストが三位一体を唱えるが如く、言わば、音楽に花と光という旋律的課題=線を描くのである。
 日本ではマカロニ・ウェスタンと呼ばれ親しまれている、スパゲッティーウェスタンを彼等のスタイルで演奏するのだが、これがだんだん愛すべきギグとして心地よいシートに座っている私を前のめりにした。
 惜しむらくは、音響だっただろうか…悪いわけではないが、各々、ホールは設計やタクの位置でそれぞれ異なる。その環境の中で最も良いバランスを取るよう仕組まれていても、難しいものなのだと感じる。
 そう、同伴のチェリー・ブロッサムは一曲聴いた時点で最初の座席からわざわざ別の席に移動して聴きに入った。私はその理由にすぐに気づいたが、私は私の席に残った。桜井/ブロッサムが席を移動した理由というのは、惜しむらく、という私の言葉に通じている事は言うまでもない。が、私はむしろ、3人のイタリア人の演奏に、テーブルワインとそこに咲いても障りはない雑談が欲しくなったものである。


 コンサートがはねた後、福岡史朗さんと桜井芳樹-チェリー・ブロッサムと共に九段下から馬場へ移動し、以前チェリーがM女史に連れていかれたというお店で、「今日、帰りたくない」と思うようなひと時を過ごした。
 史朗さんはまたクールな新譜を制作したばかりだ、私の体調が悪く、しばらくコンサートにも足を運べなかったが、ずっとお会いしたかっただけに、その晩は、本当に愉しかった。


 やはり、いいな。
 心素直になれる人たちと共に在る事は。
 何日ぶりだろう、こうして、外で<幸せ>に過ごす事ができたのは。
 史朗さんに感謝をこめて。









 pic1: イタリア文化会館 
 pic2: シンガー・ソングライター/福岡史朗さん 




 Risa Sakurai / 桜井李早