佳き酒、佳き音楽 - 吉祥寺ハバナムーンにて








 一月十五日、吉祥寺ハバナムーンでの夜、スーマー&桜井芳樹の演奏を愉しんだ。ゲストに藤原マヒト氏、川口義之氏という、スーマー氏のアルバム『ミンストレル』の参加ミュージシャンたちをお迎えしての味わい深いライヴだった。
 この日は雪になるのではないかと思えるほどの天候、"火鉢"がほしくなるような寒い晩…"火鉢"はスーマー氏の楽曲のひとつのタイトルでもある…だったが、ハバナムーンに集った人々は皆、温かく、お酒を飲みながら、店主の木下氏の作る絶品な肴と共に、音楽に聴き入ったのではないだろうか。
 また、この晩の演奏者たちも、これまでとは少し異なる心持ちで、奏されたかもしれない。


 というのも、もはやご存知の方々は多いと思うが、ハバナムーンはこの一月で閉店する。
 このお店で気持ちよく、美味しく、お酒を飲み、音楽を聴いた人々にとっては辛い事であるが、例えば昨晩のように、夜遅くまで、このお店で話に明け暮れ、人によっては帰る事ができなくなるほど、或は、帰らなくても許してもらえるほど甘え、呑ませてくれる佳き店など、なかなか、無い。
 そのような<麗しき酒場>を、長年切り盛りしてこられた店主の木下氏に、心から感謝したい。


 だが、まだ半月、残っている。
 ハバナムーンは一月三十一日まで営業する。


 十五日の晩にいただいた肴の中で特に私個人が舌鼓を打ったのは、"蓮根のマリネ"であった。実に元日から感冒にやられ、咳に苦しまされていた私には有り難い食材である蓮根なのだ。それが甘辛く香ばしく揚げられて皿に盛られ、目の前に出て来たときには、ガブリと頬張った。


 不覚にもこの晩、木下氏に、この"蓮根のマリネ"のレシピをうかがう事を忘れた私は、この一月中、再び、ハバナムーンを訪れなくてはいけないな…。




 写真は終演後の小上がりにて。お願いして私の携帯で撮影してくださったのは、素敵な友だちで音楽とお酒、美味しいお料理、そして人生を愛する、マダム・M。




 さて、私もそろそろ、今年の抱負にむけて、作業モードに入り込みたくなってきた今日この頃。




 李早