- 心は秋の狩人 -
昼下がり、出かけた蕎麦屋で偶然、私の本を編集・出版してくださった三島悟氏にお会いしわいわいと。
宵になり、秋の虫が家の中で鳴いている。
今日はよく家中の窓と扉を開け放っていたので、外から迷い込んできたのだろう。
しばらく一緒に暮らそうか、コオロギさん、あなたの鳴き声のテンポがだんだん遅くなっていくだろうことをわたしは知っているから。
相次いだ台風で湿気にヤラレていただろう台所の鍋やフライパンも奇麗に洗い、お日様に当てた。
風通しのよい一日だった。
しかし、訪れる風の方向と温度は変わったね。
シフト。
視るものを変える時期。
そして、秋はわたしにとり、最も感性が蠢く季節。
夏から秋にかけて、それは近頃、感心したこともあり、記しておきたいひとつふたつの記憶があるが、それを急ぐ事もないだろう。
時間はわたしが操作することとしたの、上等でしょう。
今は、秋。
心は秋の狩人。
ここ30年来、秋ともなれば、心は秋の狩人であるわたしなのだから。
––– 肉が食いたいわね。
桜井李早