swingin' lete, swingin' Musashino



 Musashino

 Yoichi Aoyama & Risa Dec.212008

 pinups

 Isao Tsukamoto & Risa Dec.212008



 12月21日、朝食をとりながらNHKラジオを聴いていれば、そこから流れてくるのは、チャイコフスキーの『くるみ割り人形』。
 日本ではクリスマス・シーズンや年末というと、ポピュラーなのは専ら『第九』だが、西洋では、クリスマス・シーズンはこの『くるみ割り』、そしてヘンデルの『メサイア』という具合である。
 私は子供の頃から『くるみ割り人形』が大好きで、特に「情景」に聴くことができるような、まさにチャイコフ節とも言える「ただ降りてくるだけの音階」から醸し出される美しさにうっとりしてしまう。「ドシラソファミレド」や「ラソファミレドシラ」をこれほど特別なもののように感じさせる作曲家はいないだろう・・・もっとも、その旋律だけでは確かにただの音階でしかないが、そのメロディを包み、楽曲に深みを与えるオーケストレーションが、チャイコフスキー・マジックなのであるが。

 暖かな日曜日である。
 午後からやや風も吹く。
 12月であるのに、春のような香りが漂っている。

 
 そんな昼下がり、武蔵野市民文化会館へ。leteのコンサートである。『硝子戸の中』を忍ばせ、出かける。

 出演者は、塚本功中村まり、桜井芳樹、滝本晃司、TICA、さかな。
 皆さん、leteで長くライヴ活動をなさってきた人ばかりであり、小さなスペースのleteの空気を、このホールにも流していらっしゃった。ステージ中央に収まっているパイプオルガンの前には、さかなの西脇さんのお描きになった絵画が置かれている。その絵は、私にはどうもこの21世紀の作品には思えず、どこか18世紀から19世紀の作品のような印象があった。西脇さんが描写に仕掛けた秘密を考えたくなる・・・が、それは、今日は野暮ということで、止めておきましょうか・・・しかし、素晴らしい作品なのである。
 Rocker塚本君は、とびっきりの演奏を見せてくださった。はい・・・そうです・・・文字通り、「恋に堕ちる」ようなLive・・・「パーティーに呼ばれてやってきた」とおっしゃる彼は「アベ・マリア」(塚本君のクラシックものは実にカッコいい!)に始まり、「キャラバン」を〆に粋にステージを去った。
 まりさんの今宵は大変素晴らしかった・・・彼女と一緒に演奏したチェリー(桜井芳樹)のギターは、女性の歌をとても上手く引立てる。私は見事だと思った。まりさんの歌声は冴えていた。そして、桜井の演奏は、彼の一面・・・キラキラした微光に似た柔和な響き・・・を披露できたのでは、ないだろうか。
 ゆったりとした時間が流れ、知った方々も会場に遊びにいらしていて、久しぶりに真人さんにもお会いし、休憩の時間にはちょこっとビールなどいただきながら、暖かい冬の風を浴びる。
 最後はさかな。息の合ったおふたりの演奏は、優しく、力強く。ポコペンさんの歌に、涙しそうになる私であった。彼女は、甘くない女性である。誤解なさらないでね・・・厳しい女性と私は申し上げているのではないのです・・・甘くなければ辛いというのは、あまりに単純な見方・・・そうではなくて・・・
 そうではなくて、ポコペンさんの物作りの在り方が、甘くない、と、私は申し上げたいのである。私は彼女の詩世界にも、非常に共感させていただいている。私の感覚ととても近い意識の流れのようなものを、ポコペンさんに見てしまうのである。例えば同じ言葉を使ったとして、それで必ずしも誰かに共感できるわけではない。というのも、その言葉を使う人の精神が「本当にその言葉通り」なのか否かが視える時が、私にはあるのである。言葉を軽々しく用いているだけの文章(詩)には、限界があり、いつかはしらじらしく感じられるようになるだろう。それに対して、その言葉を使うことで文全体に灯りがともされ、創作者の世界(頭の中)が卵が孵るようにして外に出るような作品には、生(せい)の強さがある・・・心を歌うとは、そのようなことではないだろうか。
 私は、ポコペンさんに、そんな魅力を感じる者である。


 終演後、色々な方たちとおしゃべりをしていたのだが、よくお会いする人とお話していても、何故か(勝手に)年末ムードになっている私がいた。
 撮影を担当されていた知恵さん、本当にお疲れさまでした。
 また、leteの町野さんから氏の奥様の手作り石鹼をいただいた・・・オリーヴ、キャスター、パーム、ココナッツなどのオイルとラヴェンダー・パウダー、アップルFOを成分としている石鹸・・・食べてしまいたくなるような石鹸・・・ありがとうございます。年末、このステキな石鹸で、一年の穢れを落とすことにいたします。


 ここは武蔵野。
 凡そ40年前のロンドンではないが、何となく、「swingin'」な気分。



 pic1 : Me=Risa(hiding Soseki...he is being in her bag...)

 pic2 : Mr.Yoichi Aoyama & Risa

 pic3 : please to see the Mr.Bowie's "pin ups"...see (like) Bowie & Twiggy...peaceful brother & sister play...
here, swingin' Musashino...not swingin' London...and though it is not BIBA but BURBURRY.

 pic4 : Mr.Isao Tsukamoto(Rocker) & Risa


 いよいよクリスマス寒波が訪れそうな夜空に、清く向かい合う。