ジュジュと引力

 雨の中、車は走る。
 車内に響くのはジュジュ・ミュージック・・・サニー・アデ・・・ここのところ、ずっと車の中はこれである。
 赤信号で停止する。
 すると、ワイパーの規則正しい動きの音とウィンカーのカチカチとジュジュ・サウンドが見事に混ざり合い、精妙なポリリズムを醸し出す。
 ジュジュの上に乗ったワイパーのリズムが4拍子、ウィンカーは2拍子、だけど、お互いのビートはズレて走る、私は交差点で停止している、幾つもの時計が動いているみたい。
 面白くなる。
 なので、わざわざ、信号で止まる度に、左右に曲がる合図を出す、ほんのちょっとの道草だわ・・・。


 帰宅して夕刻、窓の外を眺めれば、樹の葉から滴り落ちる雨の雫は白く。
 それは、まるで降り始めの雪のように、静かに慎重に。
 だが、それらがたった今まで居た場所は、緑の葉の中、雲の中ではない。
 彼らが空を覆う雲の中に居たのは、もっとずっと前の時刻のことだろう・・・それらは今、緑の眼の中で溢れようとしている。
 そこで、考える。
 これが季節外れの・・・初夏に降る雪だとしたら、どんなに素敵だろうと。
 そんな奇怪なことがもしもこの世に起こることがあったなら、私はそのような日にこそ、ひっそり息をひきとりたいと想像した。


 初夏に降る雪か・・・
 きっと、シャーベットのように美味しいだろう。

 雨は明日も降るかしら?
 それを知ったところで、どうなることでもない。

 だって、引力なのですもの。


 よい週末を!


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