日蝕/2009, as like a plant standing on the planet earth...

 期待していなかったのだが、東京から見えるという時刻を狙って、空を見た。

 何と、私には、覆われた雲の間に微笑む太陽の輪郭が見え、次いで、その円がやや変化していることに気づく。

 気づいた私は、自らの躯が樹木になったこととし、枝を腕、葉を指に見立て、雨上がりのベランダに立った。

 日光という栄養を求める緑の葉の、読めぬ心理を手探りしながら、私は右手の五本の指を、馴染みの鍵盤の上に開く五度の幅に広げ、その隙間を縫って、見上げた。

 すると、人差し指と中指の間に、美しく食された太陽がある。

 三日月ほどの、微笑んだ猫の目のような。

 木漏れ日に映される太陽は、いくつもの葉の上にいくつもの雫のように描き出されるが、私の右手の人差し指と中指の間に映った太陽は、たったひとつだった。

 見た!

 特別な眼鏡も鏡も使わず、私の右手だけで見えた、確かな東京の空の日蝕


 be well...as like a plant standing on the planet earth...



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