嫌なのか佳いのか解らない夢/Hard a starboard
そう、嫌なのか佳いのか解らない夢を見た。
場所は古いバスターミナル。
ひとりの女性に私はいきなり言われる、
「私はあなたが大嫌いだった。あなたのような人が生きていると思うと、虫酸が走ってしかたがなかった。今まで言わなかったけれど、吐き気がするのよ」
私は薄笑いを浮かべて、その人の言う事をしばらく聞いているのだが、どうも納得さえしている。
・・・うん、誰にだって、嫌いな奴ってのが、いるもんよ。で、あたしがあなたのそれであるというだけのこと・・・。
彼女はつづける。
「よく解ったようなことを言うけれど、いい年して青臭い学生みたい。あなたの言う事は、観察や知識から生まれた事、経験から得たものじゃない。理想論で、やみくもで、離れ業のように感じるけれど、現実的ではない」
私はしげしげとその人を見つめていたが、不思議と腹が立つほどではない。
腹は立たないが、いいかげんそれを聞いているのも悲しくなる。
そこで私は囁いている。
・・・Deus ex Machina・・・私をそのように思うあなたは、しかし、Deus ex Machinaにはならない・・・
二人はバスを待っている。
が、バスは来ない。
「歩こう」と、私はその人の肩に手を回して、並んで歩く事をうながしてみた。
すると彼女は、
「これ、あげる」と言って、荷物のたくさん入ったバッグの中から小さなプラスティックの丸いボールを取り出した。ボールの中身は金平糖。
だが共に歩く彼女は相変わらず不愉快な表情である。
私はそれ以上、話さなかった。
そして私たちは、どこかへ、消えた。
次は病院の診察室。
何故自分がこんなところにいるのか見当はつかない。
つかないが、私の目は、カメラのように静止したり動いたり。
その診察室には素敵な紳士(私が尊敬している紳士である)が診察を待って、座っている。
医師の姿は見えない。
すると、誰か・・・それは影のような者なのだが・・・が現れて、紳士の背後にまわり、いきなりガムテープで紳士の口元を塞いだ。
遣った者の姿はすぐにどこかへ消え、私は飛び出してそのガムテープをはずしたいのだが、私はカメラなので動けない。
場面は暗い夜道になる。
私は歩いていて、向こうにぼんやり光る通夜の場所を目指している。
両手を組み、目を閉じている紳士の姿を見る。
辺りに人はたくさんいたのだが、私が氏と面会しているうちに、誰もいなくなってしまった。
私は横たわる氏に話しかけていた。
「生きていますよね、本当は」
すると、氏はぱっちりと目を開け、私に微笑みながら言う、
「ええ、生きていますとも!」
真っ白な氏の姿は輝いていて、私は助かった! と感じている。
目が醒めて、思った。
前進的退化の道筋。
そして、近頃読んでいる書物の中の或る言葉。
「作るのさ、世界に合わせるために自分をちょんぎるんじゃなく、自分に合わせるために、世界をちょんぎるんだ」
この天真爛漫で、いいじゃないか。
そうしたら、何だか来年の抱負のようなものを求めたくなった。
Hard a starboard!
面舵一杯!
私は氷山には、ぶつからない。
そんな形で破滅するのは、冗談じゃない。
私はタイタニックではないわ。
Captain Risaは、星を観て航海する。
例え迷っても、判断は自分で。
倒れている場合じゃ、ないな。
..* Risa *¨