フランスにて / 南仏



 10.13_Colin
the narrow path...






 10月11日からフォンテーヌブローを離れ、フランス南部で過ごしている。
 到着して家の中を整えたり、また、ここは南仏ではあっても高地にあるため10月に入れば朝晩は冷えるので暖炉にくべる薪の手配などして数日の間バタバタしていた。夏はさぞや心地よいだろう。周囲の山々は高いものでは2000メートルくらいあるだろうか、空気がよく、そう、教会の向かいの広場で昼下がりにペタンクをしている年配の男性たちを見かけたりする、のどかな場所である。避暑のために家を借りている人もあるため、この季節はひっそりしている。
 薪は注文して届けてもらうのだが、その届いた薪を家の脇に積み上げる作業があり、幸い暖炉に入る大きさに切ってあるので薪割りの必要はないが、積み上げ作業はなかなかの労働である(薪が乾燥していればまだ良いが、まだ新しい薪だったり少し湿っているとその分重く、何しろ目方で金額が決まるので重いと損をする羽目にさえなる)...しかし、何故か私の身体はどこも痛くなったりしない、不思議だ、上腕二頭筋、私の細腕は案外しっかりものだった、そこで昔ヒットしたドラマのタイトルではないが、『細腕繁盛記』と行きたいものだと、うっすら笑いが込み上げた...うっすらと額に汗しながら。
 古い石造りのこの家はインターネットが繋がらないため、今のところ、近くの街ニヨンまで食品の買い出しを兼ねて出かけながらインターネット・カフェに寄るのだが、エスプレッソが1ユーロというのは有り難い。が、ニヨンまでの道はクロスロードでガソリン代がかかる。ガソリンは値上がりしていて(それはフランスのオイルはアフリカからマルセイユに届くのだが、それが今、ストライキのため滞ったりしていることが理由なのだが)、コストは馬鹿にならない。


 ニヨンの街はそれほど大きくはないが、感じのいい印象だ。ここも避暑で賑わう場所なので、季節はずれではあっても滞在している観光客が目立つが...というのも英語で会話している人たちやフランス以外の車のナンバーを見かけるからだ...日本人は珍しいだろう、時々私をじっと見つめる人もいる。


 フランス南部にいても、やはりヨーロッパの秋は日本より速いと感じるが、それでもイングランドやドイツに比べれば温暖な気がする。
 ブヴィエからニヨンに向かいながら、とても雲が多く、山々に立ちこめている光景を見る時、コリンは故郷のスコットランドを想い出すようだ。そんな彼の作るスコットランド風サンドウィッチは素敵な味だ。ハム、数種類のチーズ、固ゆで玉子とオニオンを無造作に切ったもの、リーフなどを挟むのだが、これを彼が9月末に私が病気になった時に初めて作ってくれた時のことは忘れられない、寝込んでいる私に少し食べないといけない、と言ってスープと共に運んでくれたのだ。夜など、彼は陽気にスコットランドの話をしてくれる、メアリー・スチュアートの事、スコットランドはたくさんの古い城があり実はヨーロッパで最も多いかもしれない事、タータンチェックの由来について...また、彼の昔話は幻のようだ...そして聴こえてくるフランス語のニュースを英語に同時通訳して私に話してくれる、彼の声はとても柔らかく優しい。


 ところで、それらのニュースは日本のものとまるで異なっていて私はいつも興味深く彼の言葉を聴く。日本にあっては今、どのような話題が中心なのかよく解らないが(これを書いている11月7日の今日は日本シリーズの事をうかがっております)、海外のニュースに見る世界状況はどうも日本で見るものと大きな違いを感じずにいられない。ギリシャの国家事情(これは非常に世界経済に影響している)、中国、インド、メキシコ、ブラジル、特に中国の進出や力は目立つようだ、これからは中国語の時代がくるかもしれない、何しろ世界で最も人口が多いのだから...次に多いのはFacebookだそうだが...テクノロジーの日本、経済大国の日本と言われはするが、私は顔をしかめてみたくなる、ナショナリズムではない、また国力を持つ事に極端に系統などしているわけではない、が、ただ、国が衰えるということが何に始まるのかを知らしめられる...。そしてトヨタの会社や工場をここフランスでは大変良く見かける。当然、トヨタ車も道路で見ない日は無い。フランスは自動車大国なのだ。


 話は前後してしまうが、少し前、ハイウェイを走っていて思わずルートを間違えたおかげでグルノーブルへ向かおうとしていた。見上げれば岩肌もむき出す豪快な山々が聳え、それらは終わる事がないように連なりつづけている。スキー場となっている斜面も目立つ。
 国境を越えればスイスである。
 私は国境を越えたかった。
 が、それはやめておいた。
 そう、ここにいれば、そんなこと、つまり国境を越えることは容易いのだ。


 出かけてばかりいるのでもない。家では音楽が突然始まる。私がサイモン&ガーファンクルをカヴァーするとは...と、これはコリンのリクエストである...slow down you move to fast, got to make the morning fast...


 そうして日が暮れると夕食を作る。
 私も料理にはまずまずの自信はありはするが、コリンが料理したトマト・ソースで仕上げたラム・シチューは大変美味しかった、それは何故か私の作るトマト・ソースに似ていて不思議だった。
 適度のビールやワインをいただきながら、ブヴィエの夜は更けていく。




 オランジュに出かけた事など、綴っておきたいことはあるが、今日はこのへんまでに。




 そして、様々な人種が混じり合っているということに、私の感覚は慣れてしまったようである。




 Peace & Love






 Risa