世界で一番小さな村 / デュルビュイ(Durbuy)の家








 風に吹かれ、今日の仕事を終えた時、私は私のマスクを振りはらう。
 さあ、ここからが、私の時間だ。


 ここは世界で一番小さな村とも呼ばれる、ベルギーのロワン地方のデュルビュイ(Durbuy)の家。私は2005年の4月にここを訪れた。あれから9年が経とうとしている。この村に暮らす人はほぼアーティストだという。村を一周するために時間をかける必要もさしてないが、夏には多くの人々が訪れ、コンサートも開かれる。見た所、とても平和である。そうしてこの村が世界で一番小さな村と呼ばれる事に留意点をおきながら、そのような存在が果たす役割について想像も巡らせはした。私は、そう、"ウブ"ではないからな…だが、このデュルビュイ(Durbuy)という土地の名は、忘れられないのである。
 世界…その一言を音にする時、今、私が思う理想とは、政治家などいない世界であり、誰も、デモや戦争などという言葉を考える術もない世界があること。
 つまり、悲しむべきは、その我々の理想とは相反する別の意図を持つ世界が、この世に在る、という事だ。
 それはドアをノックする。
 さあ、私は箒を持って、それに対処しようか。
 しかし、それは理想なのだ。
 しかし、そんな理想があっても、今は、いいじゃないか。




 Risa Sakurai / 桜井李早