6月14日、"Kuro x Risa"『仮構線プロジェクト』Live@吉祥寺MANDA-LA2の記録








 W杯や集団的自衛権の問題などで、綴り遅れておりましたが、以下は、去る6月14日、吉祥寺MANDA-LA2で行われた"Kuro x Risa" -『仮構線プロジェクト』によるライヴの記録です。


 1部は、ゲストとして参加していただいたギタリスト/桜井芳樹氏と、チェリスト/坂本弘道氏の即興演奏とともに画家Painter Kuroさんのライヴペインティング。カンヴァスがグイグイと塗りつぶされ、Kuroさんがこの日、身につけていた黒いシャツは、デザイナーの日下訓志さんによって提供されたものですが、彼が描きながら飛び散る絵の具は、カンヴァスだけでなく、その黒い衣装にさえ表現されていくようでした。"prelude"としては予測を反するような桜井氏と坂本氏の即興演奏の力で、タイムテーブルはこの時点ですでに押しておりました。実に、このお二方には、ゲストとお呼びするには相応しくない程の演奏の力をこの後、3時間に渡り、いただいた次第なのです。


 2部は、今回ゲストとして参加してくださった、カルメン・マキさん、1部でも演奏してくださった桜井芳樹氏、坂本弘道氏のステージ。マキさんの歌は、何度も私は申し上げておりますが、この晩も素晴らしく、恐らく、来場してくださったお客様の中には久しぶりにマキさんの歌を聴かれた方もあられたかもしれませんが、物語の中に引き込まれていくようなうっとりする世界を繰り広げてくださいました。
 有り難い事に、マキさんは、私が最近、楽曲提要させていただいた「デラシネ』」や「望みのない恋」をこの日も披露してくださいました。私は正直、自分の出番を待ちながら、改めて、この2曲について想わずにいられませんでした。それは、自分が重ねてきた作曲者としてのキャリアの中で、以前にも増して良い曲を作る事ができたという喜びです。言うまでもなく私は私の作ってきたかつての作品も愛しています。しかし私はやはり前を向いて創作する者であり、私は過去に囚われて生きていない。そのような事を考えながら、私はマキさんの歌と、お二人の素晴らしいミュージシャンの方々の奏でる音の妙に励まされておりました。


 ああ、音楽とは、その場で奏でる演奏者の魂の音による生々しい現象だ。
 弦楽器が持つ音の道は、水平に流れる。
 そして声は、歌は、垂直に向かう。


 3部は、私がPainter Kuro氏の作品「like a human」に寄せて書かせていただいた詩の朗読に始まり、「五月のマリア」、「ピカレスク」、英国の17世紀の作曲家ヘンリー・パーセルのオペラ、『Dido and Aeneas』からのアリア「Dido's Lament」、劇団『野戦の月』のお芝居の中の楽曲で、CDで私が歌わせていただいている「怒りの涙」。
Dido's Lament」は、悲劇であるだけに凡そ物悲しくスローに歌われるアリアであり、古典作品ですが、この度の私の場合は、やや挑戦的に表してみました。これは寸前のリハーサルで斬新に、独自の感性でアプローチする桜井氏によって触発され、そのように試みるつもりになりました。「怒りの涙」は、これはあの震災前に発表されたものですが、まさに、今の時代に歌っておきたい曲として、このライヴではあえて取り上げました。
 その後、再びKuroさんのライヴペインティングのコーナーとなり、ここでは、桜井氏、坂本氏の見事な演奏に心動かされた方々も多かったのではないでしょうか。Kuroさんの表現も、音楽に促されながらリズム感溢れる活き活きとしたものでした。彼は漲る生の音楽に呼応するように、そこに存在する画家としての心をリズムを持って表現されました。
 そして最後に私が「ミネルヴァ」を歌わせていただき、終演となりました。


 …伝説は塵になり、輝く水に戻る…


 惜しむらくは、私の著書『YES』の中からの「秋は人さらいのシーズン」とタイトルされた作品を朗読するコーナーが時間の都合で叶わなかったことです。
 是非、後に、朗読したいと思っております。


 ライヴはダイナミックだったと感じます。
 訪れてくださった方々の感想も伺いましたが、とても嬉しかったのは、「エキサイティングだった」と、おっしゃってくださったご意見の数々です。


 文章表現や、作曲活動は勿論ですが、私は、もっともっと、歌って表現する事もしていきたいと実感いたしました。


 今、心から、このライヴに参加して応援してくださったゲストのカルメン・マキさん、桜井芳樹さん、坂本弘道さん、プロジェクトの主催者である渡辺宏さん、長谷部道代さん、協力してくださったたくさんの方々の暖かい友情、そしてこのライヴに足を運んでくださった多くの方々に感謝いたしております。

 
 どうもありがとうございました。


 これからも、よろしくお願いいたします。









 Peace & Love




 桜井李早 / Risa Sakurai