重曹への愛がつのる今日この頃…








 今日は絨毯を重曹でお掃除した。この絨毯、十八年前にこの宅を購入した時、身内から贈られたものなのだが、毛並みがよく、頗る丈夫なのだ。此処を訪れた人の中には、お布団を待つ事もせずこの絨毯の上で眠った人もあったかもしれない。秋まで一休みしてね、と絨毯に感謝した。
 実にこの重たい絨毯を居間から階上のベランダまで移動させ、干し、重曹を振りまき、一時間程置いた後、一気に掃除機をかけたのだが、やはり左手の親指と一差し指の間、というか、そこを結ぶ掌が痛む。手首から肱にかけてさえ、痺れてしまった。右手も同様だが、右にはまだ救いがある。


 生活に溜まったものを取り除き、一掃するのは気持ちがよい。窓は全て開かれ、埃も屑も空を舞い、夏空の餌食となる。
 しかし、それでも、何もかもが取り除かれたとは言い難い今日の日本が辛い。
 辛いが、こうして私が掃除をしている間にも、爆撃を恐れて暮らす人々が在る。
 私が今日、取り除いたと思っていたものは、何だっのか。


 魔法の絨毯に乗ったような気持ちになりながら…
 …その国には地下の通路があるという…その国には地下のシェルターがあるという…
 では、私は今宵六道の辻から、そこを目指してみようか…
 それができれば、私はその国の地獄を確かめることもできよう…


 重曹への愛がつのる今日この頃…しかし痛い、私の、手。
 ピアノを弾きたい。



 
 Risa