火の鳥のごとく......



 何だか今、ちょっと、弱いかな。暑さのせい。それとも…
 昨日から始まった、花火。今宵も、花火。
 これから一ヶ月、毎週末、この家から見える花火。それは奇麗なのだけれど、毎週、見ることができるのは贅沢かもしれないけれど…空は眩く、近所から聞こえてくる子供たちの声は、「わぁ〜! 」って、ね、楽しそう。本当に子供たちの声は活き活きしているのよ。
 だけど今年は火薬が爆発する音に、別の事、思うのかしら…。
 今、虐殺が行われている土地の事を思うのかしら…或は、戦争…。


 夏休みの子供たち、家族たちは、アミューズメントパークに集う浴衣姿…ここは日本、今は日本…間違わないでね、日本。
「平和な日本が好きでした」、と言って自らの命を燃やして絶とうとした人もあった。
 花火が好きな子供たちの未来、彼等が大人になった時にも、彼等が彼等の子供たちと一緒に、「奇麗だね!」と言いながら安心して見上げる事ができる日本の夏の夜。
 そんな愉しい夏、つづくわ、夏だけでなく、花咲く春も、豊穣の秋も、再生を待つ寒さの冬も、日々とは願い、生とは希望。
 だから、見間違わないでね。何度でも言うわ、見間違わないでね、見間違わないでね。




 火の鳥のごとく……まさか。


 私は、起きたまま、夢をみているかもしれない、今。

 

 今日、八月三日は大原麗子さんの命日。
 私は大原麗子さんが子供の頃から好きだった。
 五年前、八月半ばを過ぎた或る日、或る場所に出かける際、たまたま青山斎場の横を車で通り過ぎた。そこでは麗子さんの葬儀が行われていた。お別れに立ち会えた気がした。
 あの人の笑顔も美しかったが、涙を流す時の表情は独特で、じっと誰か、何処かを見据えながら、堪え、頽れるように泣いてしまう姿に、少女の私は、「女が泣く時は、こういう風に、泣くべきなのね。決してすぐに泣いてはいけないのね」と、言い聞かせたものだったが…。
 相変わらず、私の左手の親指と人差し指は引きつったよう、なめらかに動かない。




 


 写真は市川崑監督の映画『火の鳥』での大原麗子さん。




 本当に、おやすみなさい。






 Risa :*)