オニオン・グラタンスープと『棺桶島』



  




 8月10日、台風の中、朝、寒かったので、オニオン・グラタンスープで始まった日曜日。
 午後は久しぶりにのんびり読書をしている。読んでいるのは、『棺桶島 / L'Ile aux trente cercueils』、随分前に読んだルブランの冒険物だ。その時も、やはり夏だった。
 物語の舞台は1917年、第一次大戦中、作家はブルターニュ地方の歴史や伝説にまつわる素材を使って或る暗黒の世界を書いた。いや、非常に残酷とも言える。そしてこれを読みながら、めくるめく全ての場面を、状況を、景色を思い浮かべてみるにも、なかなか想像力が要る。以前読んだ時、夢中で読み、時間もかけたが、それはそれは暑い夏、この長編読後にぐったり疲れた記憶がある。
 仏蘭西語のタイトルをそのまま訳すと、『三十の棺桶に囲まれた島』という意味らしいが、リュパン物は少年少女向けと笑うなかれ。晩年にかけてのルブランの小説はとても歴史感に溢れ、泥棒物語というより、探偵物語であり、戦争に触れているという意味では英雄的にリュパンを描きこそしても、どこか、置き忘れられた伝説、歴史への想いが滲み出ていたりする。
 さて、では再び、孤島に戻ろうか。




 Risa :*)