12月29日、sakana、ロンサムストリングス、スーマーのライヴ @所沢MOJO / よいお年を*








 29日は、sakana、ロンサムストリングス、スーマーさんの演奏を聴きに所沢MOJOへ。皆さんの音楽は素晴らしく、私は全てのライヴが終了するまでの恐らく三分の一の時間を、涙を浮かべ、時に流しながら鑑賞しておりました。


 最初はスーマーさん。今年、『ミンストレル』というアルバムを発表されました。氏の録音の日々には私も陰ながら立ち会わせていただいた事もあり、それらの思い出が甦ると同時に、この月の初めに行われたスーマーさんのレコ発ライヴでの感動的な歌を聴かせていただきながら録音物とはまた異なる感覚で、氏の歩んで来られた音楽道にまさに心を打たれました。歌ってこられたスーマー氏の姿勢はとても強く、それは旅の如く、これからも弛み無く続く事でしょう。


 ロンサムは、最初のベーシストの松永孝義さんが2012年に逝かれた後、バンマスの桜井がこの先、活動を続ける事ができるのかと慮っておりましたが、今では千ヶ崎学さんが正式にロンサムのベーシストとなられ、今後も増々楽しみです。そうですね、この晩、桜井氏のMCに聞いたように、彼らの音楽を聴く人たちはきっと、お友達やお仲間、隣席の人たちとおしゃべりなどしながら、お酒に限らずお料理やお好きなドリンクを思い思いにオーダーされながら演奏を愉しまれるといいのだと思います。ラウンジ・ミュージックの醍醐味ですもの。


 そしてsakana。この素敵なカップルの演奏を聴かせていただくのは久しぶりでしたが、この晩も本当に心温まる音楽世界を堪能させていただきました。私はポコペンさんには救われる事も多々あり(実にポコペンさんは、私の著書『YES』の中でも紹介文を書いてくださったのです)、いつもお話する度に新鮮な気持ちにさせてくださる女性です。西脇さんの美しいギターが詩的で、何か西脇氏の音を聴いていると、繊細なウスバカゲロウの羽の透明に触れているような気がする私です。
 このsakanaのおふたりの演奏を聴きながら、この晩、私は、「ああ、私もこのように、私が、"私のギタリスト"と<呼ぶ/呼びたくしてきた>桜井氏と音楽を表す事が出来てきていたらどんなに私という人間はもっと大らかで豊かな人間として今を表す事ができただろう、と、顧みたくなりました。


 でも、時間は戻りません。
 この晩の素晴らしい音楽の時も、その時のもの。
 ああ、人は、次の瞬間に常に突入しなければならない…一瞬、一瞬、が、過去となっていく事を惜しむ事も或る意味、記憶という意味で必要な事と私は思って生きてまいりましたが、それが後悔ではなく、航海だったとして…




 ええ、ここからは私の短い詩です。




 ***

 
 波たちは絶えず強固にそこに押し寄せるのだが、
 岸辺には帆たちが浮かび、
 それはあたかも輝く光の中で人々を呼び寄せているようだ 

 
 だが突然、ああ! という、垂直な嘆きに似た叫びが起こり、
 私はその声に怯えるのだが、
 海洋は私を宥め、歓びで満たそうとする 



 桜井李早©




 *** 


 写真はポコペンさんよりいただきました。




 今年も後数時間、一瞬一瞬が過ぎていく事が人生と思えば、それほど大晦日にこだわる事もあらず、というのが私の主義なのだが、今、宅では熱いお鍋を炊きながら、スーマー氏の12月4日のライヴの映像を今年の航海の思い出として改めて拝見しながら。




 よいお年を