デラシネ、なんだよ、人は… / "2016年2月7日/カルメン・マキ - デラシネ・ライヴ@吉祥寺Manda-La2"



 日曜の夜の『カルメン・マキ - デラシネ・ライヴ』は最高だったよ!
「眠らない男(ひと)」という詩、私は昨年のマキさんの"アングラ・サイド"でのライヴでその朗読を聴かせていただいたが、すこぶる面白いのだ、この詩の顛末を語るマキさんの表現が。
 それをうっとり聴いていたら、あら、まっ!
 朗読からの引き継ぎとしてマキさんが歌った曲は、「夜の虹」であった。この曲は作曲/桜井芳樹&作詩/桜井李早(己・拝)のもはや20年以上前に作った『野戦の月』のお芝居のための楽曲だが、マキさんがこの曲を「眠らない男(ひと)」との流れとして選曲されたことにグッときた。
 一部は"愛"、二部は"魂(Soul)"とおっしゃったマキさんの物語性に溢れるライヴを堪能した。
 この度のライヴでドラマーとして参加された椎野さんの演奏は、氏の演奏力、洗練された(この言葉は時に誤解を招くのであまり使いたくないのだがあえて個人的に今は使わせてください)感性に溢れ、その息づかいが齎した波紋がライヴ全体の大きさ…ランドスケープと言って過言ない景色を作り出すことにもなったような気がする。
 ベースの西嶋氏は、この夜は最初から心が定まったように奏されていた。
 ギターの桜井は、ここManda-La2の音、という習わしもあるだろうが、それにつけても久々の炸裂する音の力とあの…なんだろうね…独特の自由感がロンサムストリングスでの演奏と通じる無頼性に富んでいたと思う。
 アンコールにマキさんが歌われたのは、チャボさんの「ガルシアの風」だった。
 2月7日のこのライヴ、物語のような晩の締めくくりとして、足を運ばれた全ての人々の心を暖かくつつむような演奏は心に沁みた。


 2月7日、カルメン・マキ - 私はデラシネ LIVE@吉祥寺Manda-La2
【セットリスト1部】
 1: No face,No name,No number(スティービー・ウインウッド)
 2: 眠らない男(ひと)朗読(水城雄)
 3: 夜の虹(桜井李早x桜井芳樹)
 4: 望みのない恋(ガルシア・ロルカx桜井李早)〜波の音(朗読:寺山修司)〜望みのない恋
 5: てっぺん(カルメン・マキx鬼怒無月
【セットリスト2部】
 1: それはスポットライトではない(浅川マキxG.Goffin)
 2: デラシネカルメン・マキx桜井李早)
 3: 玉音放送(朗読:寺山修司
 4: NORD-北へ(カルメン・マキ)
 5: ソウル(リクオ
 Unc ––
 1: ガルシアの風(仲井戸麗市
 2: にぎわい(浅川マキxかまやつひろし


 今年になってからあまり人にお会いしない日々が続いていた私であったが、この晩は陽気に過ごすことができた。
 ここで漸く、年が明けた気分でもあった。


 皆さんも時には音楽を聴きに街に出るといいよ。


 寺山修司さんは「書を捨てよ街に出よう」だった。
 私は「スマホを捨て音を聴こう」と言いたい。


 時代は変わる––そんなことは誰かに言われずとも生きていれば解る。
 全てが変動していく中で自分の立場が揺らぐ人もあるだろう。
 が、そこで揺らいだと思う必要はなくむしろそういう時こそ自分あっての世界と思うことで客観的になってやることは人間の生き方として素直だからね。


 デラシネ、なんだよ、人は。




 追記:
 このライヴの晩、拙著『YES』を購入してくださった方々、どうもありがとうございます。

 感謝をこめて 




 桜井李早