- 偶像崇拝、新発売 -



 ポケモンという偶像との旅が始まった人類なのか。
 皆、スマートフォンを見て歩き暮らし、前や後ろ横も気にせず、雨にも負けず、風にも負けず、夏の暑さにも負けぬ丈夫な身体を持ち、欲はなく、決して怒らずいつも静かに笑っている...  


 宮沢賢治がこの21世紀を天国から眺めたらどう思うだろう。




 ***


 雨にも負けず 
 風にも負けず 
 雪にも夏の暑さにも負けぬ 
 丈夫なからだをもち 
 慾はなく 
 決して怒らず 
 いつも静かに笑っている 
 一日に玄米四合と 
 味噌と少しの野菜を食べ 
 あらゆることを 
 自分を勘定に入れずに 
 よく見聞きし分かり 
 そして忘れず 
 野原の松の林の陰の 
 小さな萱ぶきの小屋にいて 
 東に病気の子供あれば 
 行って看病してやり 
 西に疲れた母あれば 
 行ってその稲の束を負い 
 南に死にそうな人あれば 
 行ってこわがらなくてもいいといい 
 北に喧嘩や訴訟があれば 
 つまらないからやめろといい 
 日照りの時は涙を流し 
 寒さの夏はおろおろ歩き 
 みんなにでくのぼーと呼ばれ 
 褒められもせず 
 苦にもされず 
 そういうものに 
 わたしはなりたい 




 ~宮沢賢治 




 *** 


 麻生太郎財務相が、「引きこもりが外に出る」などと発言したとか聞いたが、そんなことでどうする。
 それが日本の体制側の発言として、あまりに愚か過ぎるだろう。
 麻生氏の縁者には吉田健一があったが、健一ならこの太郎の言葉に辛口な皮肉を含みながら一笑に付しただろうと私は思いたいが…。
 それはともかく、宮沢賢治の夢見た世界とこれは、異なる。
 そうでなければ、いけない。




 李早