5月4日 - NRQ & Lonesomestrings @ cinecafe soto



 このcinecafe sotoのある十条の街はいい。本番前に、メンバーと共に軽くいただいた商店街に佇む居酒屋など、また訪れたいと思った酒場である。
 私がこの酒場で煙草を巻いていた所、隣に座る女性に不意に声などかけられたが、彼女はどうやら常連さんらしく、ひとりでカウンターに腰を下ろし、自分のペースで飲んでおられた。
 酒場にいる事とは、見知らぬ者同士でも、ひょいと会話が始まるような面白さがあり、それは銭湯にも似た市井の憩いでありながらも、何か、旅に似ている。


 話が最初から逸れてしまったが、この日のライヴ、満員御礼、演奏も何もかも、素晴らしかった。


 最初のステージはNRQ。タッ君(牧野琢磨氏)のギターは、確かにCherry(桜井芳樹氏 / ロンサム)の弟みたいだと彼等を知る人は感じるかもしれないが、牧野氏のアプローチは冴え冴えとしていて心地よい。
 中尾勘二氏の容赦ないドラム、二胡を演奏する吉田悠樹氏の音色はしっとりとしかし強く、コントラバスが加ることにより、何か独自の地図を音楽で作っているようなNRQのアンサンブル、好きだ。


 そしてLonesomestrings。言うまでもなく、素晴らしい。メンバーひとりひとりの音への愛が、聴く人の心を捕らえる。それは言葉を越え、風景を導き出す。ギタリスト桜井芳樹の醸す音はこの度来日しているMarc Ribot/マーク・リボーの如く…いや、これは個人的な感想だが。
 私は、「Candela」を聴きながら、久しぶりに涙ぐんだ。この曲はアンコールとしてこの晩、演奏されたが、あれは2006年の秋の事、ロンサムのベーシストの松永氏のコントラバスが床下から…地面の下から唸りをあげるようにして、私の肉体に響いた時のことを思い出したのだ…。
 それは彼等と共に出かけた私のひとつの旅の記憶と重なり合う。

 
 この日、ロンサムとNRQを観に来てくださった長谷部道代さんが、「フォークロアの森」と感想を述べていらしたが、そのように表現された道代さんの感性は、素敵だ!


 松永孝義さんが亡くなった2012年から2年が経つが、この2014年、ロンサムストリングスは再び活動が活発になるようだ。 


 そういうわけで、5月4日は夕刻からふらっと旅に出たような味わいを感じる事ができた。




 Risa Sakurai / 桜井李早